スキップしてメイン コンテンツに移動

カーティス・フェイス著『タートル流 投資の黄金律』

 第2作目となる**『タートル流 投資の黄金律』(原題: The Unbelievable Truth About Making Money)は、前作のような「具体的な売買ルール」を解説する実用書ではなく、より抽象度の高い「リスクの本質」と「富を築くための思考哲学」**に焦点を当てた一冊です。

こちらを具体的に要約します。


1. 主要なテーマとアイデア

本書のメインテーマは、**「リスクは避けるべきものではなく、リターンを得るために買い、管理すべき『商品』である」**という考え方です。

  • リスクと不確実性の区別: リスク(計算可能なもの)と不確実性(計算不可能なもの)を切り分け、いかにリスクを自分の有利な条件で引き受けるかを論じています。

  • 「確実性」という幻想の打破: 多くの投資家が求める「確実な予測」は存在せず、予測しようとすること自体が最大の失敗要因であると説いています。

  • 富の源泉: 莫大な富は、他人が恐れて避ける「リスク」を、論理的な裏付けを持って引き受けた対価として得られるという視点。

2. 重要な概念

  • リスク・プレミアム: 市場の参加者が「怖い」と感じて逃げ出す時に、その恐怖の対価として発生する利益。

  • 「最善の意思決定」のプロセス: 結果(利益が出たか)ではなく、その時の情報で「期待値の高い判断をしたか」というプロセスだけを評価する思考法。

  • 直感と理性の統合: 左脳的なシステム(計算)だけでなく、経験に裏打ちされた右脳的な直感をいかにリスク管理に活かすか。

  • 恐怖の克服: 人間が進化の過程で身につけた「損失回避」のバイアスが、現代の投資においては致命的な弱点になること。

3. 著者が伝えたい主要なメッセージ

「最も大きなリスクは、リスクを全く取らないこと、あるいはリスクを理解せずに恐れることである」

著者は、タートルズとしての成功を通じて、成功者と失敗者の差は「手法」にあるのではなく、**「不確実な未来に対して、いかに一貫してリスクを取り続けられるか」**という精神構造にあると確信しています。「黄金律」とは、市場の不規則性を愛し、その中で期待値に賭け続ける覚悟を指します。


4. 本書における「投資の黄金律」まとめ

本書が提示する、投資(およびビジネス全般)で勝つための黄金律は以下の4点に集約されます。



5. 本書の結論

真の投資家とは「予測屋」ではなく、**「リスクの管理者」**です。

市場が混乱し、多くの人が不確実性に怯えている時こそ、リスク・プレミアムが最大化されます。その時に、自分の決めたルールと期待値を信じてリスクを抱え込める者だけが、莫大な富を手にすることができる。

「黄金律」とは、テクニカルな手法のことではなく、**「不確実な世界において、論理的なリスクを取り続ける強靭な知性と精神」**のことであると結論づけています。


前著『タートル流 投資の魔術』が「具体的な売買ルール」を説いたのに対し、2冊目の**『タートル流 投資の黄金律』では、不確実な世界で勝ち続けるための本質的な思考法が「7つのルール」**として提示されています。

著者が最も伝えたかったのは、手法の正確さではなく「リスクとの向き合い方」です。以下にその7つのルールを具体的に解説します。


タートル流 7つの黄金ルール

1. 恐怖を克服する (Overcome Fear)

人間は本能的に「損失」を恐れます。しかし、トレードにおける最大の敵は、恐怖によって適切なチャンスを逃したり、損切りを躊躇したりすることです。優れたトレーダーは、恐怖を消すのではなく、**「恐怖を意思決定プロセスから切り離す」**訓練を積んでいます。

2. 柔軟性を保つ (Remain Flexible)

「市場はこう動くはずだ」という固定観念やプライド(エゴ)は破滅を招きます。自分の予測が外れたとき、瞬時にそれを受け入れて行動を変えられる柔軟性こそが、不確実な相場を生き抜く鍵となります。

3. 論理的なリスクを取る (Take Reasoned Risks)

「リスクを避ける」のではなく「計算されたリスクを買う」という考え方です。ギャンブルのような闇雲なリスクではなく、統計的に自分の優位性(エッジ)が証明されている場面で、適切な許容範囲内のリスクを取ることが富への道です。

4. 間違うことを覚悟する (Prepare To Be Wrong)

タートル流のトレンドフォロー戦略では、勝率は高くありません。10回のうち数回の大きな勝ちで利益を出します。つまり、「頻繁に負ける(予測が外れる)こと」を前提にシステムを構築し、精神的にそれを受け入れる準備をしておく必要があります。

5. 現実を積極的に直視する (Actively Seek Reality)

「こうなってほしい」という希望的観測ではなく、「今、市場で何が起きているか」という客観的事実(価格の動き)だけを信じます。都合の悪い情報を無視せず、常に現実のデータに基づいて判断を下します。

6. 変化に素早く反応する (Respond Quickly to Changes)

市場のトレンドが転換したときや、ボラティリティが急激に変化したとき、迷いは命取りになります。あらかじめ決めたルールに従い、状況の変化に対して躊躇なく、機械的に反応するスピードが求められます。

7. 結果ではなく「プロセス」に集中する (Focus on Decisions, Not Outcomes)

最も重要なルールです。トレードの結果(儲かったか損したか)で自分を評価してはいけません。**「自分の決めたルール通りの判断ができたか」**というプロセスの正しさだけを評価指標にします。正しいプロセスを繰り返せば、結果は後からついてくるという信念です。


結論:黄金律が目指すもの

この7つのルールに共通しているのは、**「人間の本能をロジックで制御する」**ということです。

著者は、投資の成否を分けるのは数学的知識の差ではなく、これら7つの原則を守り抜ける「精神的な規律」の差であると断言しています。



コメント

このブログの人気の投稿

利回り5%配当生活~ 広木隆 (著)

  広木隆氏の著書『利回り5%配当生活』は、日本が「脱・デフレ」に向かう中で、個人投資家が 高配当株投資 で安定した利益を得る方法を解説したものです。著者は、日経平均株価が4万円を超える時代が来ると予想する 強気派 のストラテジストであり、その前提に基づき、高配当株投資の具体的な手法、銘柄の選び方、そして新NISAの活用法などを提案しています。 主要な論点 本書の主な内容は、以下の通りです。 1. 高配当株投資の重要性 広木氏は、日本経済が長年のデフレから脱却し、インフレ経済へ移行する中で、 株価の上昇と配当金の増加が期待できる としています。この状況下で、安定した配当金を得られる高配当株は、個人の資産形成にとって有効な手段だと強調しています。 2. 高配当株の選び方 単に配当利回りが高いだけでなく、企業の 収益力 や 成長性 を考慮することが重要だと説いています。具体的には、将来的に配当金を増やせる体力があるか、安定したビジネスモデルを持っているかなどを分析する必要があると述べています。 3. 新NISAの活用 新NISAの非課税メリット を最大限に活かし、高配当株に長期的に投資する方法を解説しています。特に、長期保有による複利効果や、非課税で配当金を受け取れる利点を強調しています。 4. 売買の鉄則 損をしないための 具体的な買い方、売り方、考え方 を指南しています。単なるテクニカル分析ではなく、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)や企業の財務状況を重視した投資判断の重要性を示唆しています。 注目セクターと銘柄 本書では、日経平均4万円時代に成長が期待される セクター(業界) や、具体的な 有望銘柄31選 が紹介されています。これらは、著者の市場に対する知見に基づいたもので、投資家が銘柄選定を行う上での参考情報として提供されています。 全体として、本書は高配当株投資を始めたいと考えている人や、新NISAを活用して資産形成をしたいと考えている人にとって、具体的な指針となる一冊です。 この本を参考に高配当銘柄とNISAの成長枠を利用して「年間配当100万円のポートフォリオ」を作るべく奮闘中。

ほったらかし投資術

  経済評論家の山崎元氏が、インデックス投資ブロガーの水瀬ケンイチ氏と共著した『ほったらかし投資術』のAi要約 投資の基本原則と目的 長期・分散・低コスト : 本書が最も重視する投資の3原則です。 長期 : 短期的な相場の変動に一喜一憂せず、数十年という長い時間をかけて資産を増やすことを目指します。 分散 : 世界中の株式や債券など、様々な資産に幅広く投資することで、特定のリスクを避けます。 低コスト : 購入手数料や信託報酬など、投資にかかる費用をできる限り抑え、効率的な運用を目指します。 「ほったらかし」の意味 : 一度投資の仕組みを整えたら、その後は頻繁な売買や相場チェックをせず、基本的に放置すること。感情に左右されない合理的な投資を推奨しています。 具体的な投資手法 インデックス投資を推奨 : 特定の指数(例:TOPIX、S&P 500、全世界株式指数など)に連動することを目指す「インデックスファンド」への投資を強く勧めています。これは、コストが低く、自動的に分散投資ができるためです。 特定の投資信託1本での運用 : 「全世界株式インデックスファンド」など、1本の投資信託で世界中の株式に分散投資できる商品を選べば、さらにシンプルに投資できると解説しています。 積立投資の重要性 : 毎月一定額を自動的に買い付ける「積立投資」を推奨しています。これにより、高値掴みのリスクを減らし、ドルコスト平均法のメリットを享受できます。 税制優遇制度の活用 つみたてNISA・iDeCo : 国が設けている非課税制度を最大限に活用することを推奨しています。 つみたてNISA : 少額からの長期・積立・分散投資を支援する制度。 iDeCo : 老後資金を形成するための個人型確定拠出年金制度で、税制上の優遇措置が受けられます。 ほったらかし投資の実践ステップ 生活防衛資金の確保 : 万が一に備え、まずは最低限の生活費を貯金として確保します。 投資に回せる金額を決める : 生活に支障のない範囲で、毎月投資できる金額を決めます。 税制優遇制度の口座を開設する : ネット証券などを利用し、つみたてNISAやiDeCoの口座を開設します。 インデックスファンドを選び、自動積立の設定をする : 低コストなインデックスファンドを選び、毎月の積立設定を行います。 あとは「ほったら...

影響力の武器

     今回はブログで紹介しようか迷った本です。   なぜかって? ちょっと人には内緒にしておきたい本だからです。  「え、まだ読んでないんかい、私はとっくに読んだよ」  って声が聞こえますが、社会人には必読の1冊ではないかと思います。  私ももっと早く読んでいれば良かったと後悔しています。   その本にはトレードに関することは一切載っていない、心理学の本なんですが、お堅い本ではなくすらすらと読めるます。  しかし500ページ近くありますので、ちょっと尻込みしちゃうかもしれません。ですが、日常生活やビジネスの上で知っているのと知らないのとでは見識に雲泥の差が出ますね。色々な場面で人間心理が利用されていることがわかり、いちいち納得して読み進みました。    「影響力の武器」 は心理学の初歩的なことが書かれているのでしょうが、知っていて損はありません。  トレードも人間心理が相当分収益に影響してくるので、トレードにもちょっとは役に立つかも!? こちらがメインブログです↓ ひでぽん吉の徒然トレード 以下AIの要約 『影響力の武器』とは ロバート・B・チャルディーニが著した『影響力の武器 なぜ、人は動かされるのか』は、人々が**「イエス」と言ってしまう心理的なメカニズム**を解き明かした世界的ベストセラーです。 チャルディーニは、セールス、広告、政治など、様々な分野で用いられる 承諾誘導(相手に「イエス」と言わせるテクニック) を研究し、その根底には 人間が持つ6つの心理的原則 があることを明らかにしました。これらの原則は、意識的・無意識的に関わらず、私たちの判断や行動に大きな影響を与えています。 6つの心理的原則 本書では、以下の6つの原則が「影響力の武器」として紹介されています。 1. 返報性の原則(Reciprocity) 「人は他人から何かを与えられると、お返しをしなければならない」と感じる 心理です。 具体例 :スーパーの試食コーナーで一口食べたら、何も買わないのが申し訳なくなり、商品を買ってしまう。 2. コミットメントと一貫性の原則(Commitment and Consistency) 「人は一度決めたことや、公言したことに対して、一貫した態度を取りたい」と願う 心理です。 具体...