カーティス・フェイス著『タートル流投資の魔術』は、伝説のトレーダー集団「タートルズ」の最年少メンバーが、その**「伝説のトレード手法」と「勝つための規律」**を体系的に明かした一冊です。
投資家としての成功が「才能」ではなく「規律と数学的な優位性」にあることを証明した、トレードのバイブルといえます。
1. 主要なテーマとアイデア
本書の根底にあるのは、**「優れたトレーダーは育成できるか?」**という実験の記録です。
トレンドフォロー(順張り): 相場が一定方向に動き出した波に乗り、トレンドが続く限り利益を伸ばす。
システムの絶対遵守: 感情を排除し、事前に決めたルール(アルゴリズム)通りに動く。
期待値(エッジ)の追求: 1回ごとの勝敗ではなく、数百回のトレードを通じた「プラスの期待値」に賭ける。
2. 重要な登場人物と概念
登場人物
リチャード・デニス & ウィリアム・エックハート: 1980年代、未経験者にトレードを教えて成功できるかを賭けた「タートルズ実験」の創始者。
カーティス・フェイス(著者): 実験で最も多くの利益(3,000万ドル以上)を上げ、その手法を言語化した人物。
重要な概念
N(ボラティリティ): ATR(Average True Range)に基づき、市場の変動幅を数値化したもの。これを基準にリスクを算出します。
ポジションサイジング: 「いくら買うか」を最も重視します。1回のトレードのリスクを総資金の**1〜2%**に抑えるためのユニット管理です。
ブレイクアウト(ドンチャン・チャネル): 過去20日(または55日)の高値・安値を更新した瞬間にエントリー・決済する仕組み。
3. 著者が伝えたい主要なメッセージ
「手法(システム)そのものよりも、それを守り抜く規律の方が100倍重要である」
著者は、タートルズ全員に同じ手法が教えられたにもかかわらず、なぜ成績に差が出たのかを分析しています。
認知バイアスの排除: 人間は「損を確定したくない」「早く利益を確定したい」という本能を持っています。これに抗うことが投資の第一歩です。
結果ではなく「プロセス」を評価する: ルールに従って負けたのは「良い負け」、ルールを破って勝ったのは「悪い勝ち」と定義します。
リスク管理がすべて: どんなに優れた手法でも、破産する確率がわずかでもあれば、いつか必ず破産します。
4. 本書の結論:投資に役立てるために
投資家がこの本から得るべき究極の教訓は、**「トレードを数学的なゲームとして捉え直すこと」**です。
優位性(エッジ)を見つけ、大きな試行回数を重ねる: 1回1回のトレードに一喜一憂せず、トータルで勝つ。
資金管理を最優先する: 負けが続いてもマーケットに残れるよう、常にリスク(N)を計算して取引量を調整する。
シンプルであることの強み: 複雑な指標を組み合わせるよりも、シンプルなトレンドフォローのルールを愚直に守る方が、長期的には堅牢である。
まとめ:投資への活用ステップ
期待値がプラスのルールを決める(例:20日移動平均線を抜けたら買う)。
**ATR(ボラティリティ)**を調べ、1回で失う金額を総資金の1%以内に設定する。
ルール通りのシグナルが出たら、迷わず、感情を殺して実行する。
本書は「魔法の杖」を教えるものではなく、**「自分の弱さと向き合い、数学的な規律に従う勇気」**を授けてくれる一冊です。
『タートル流投資の魔術』の内容をさらに深掘りし、具体的なトレード手法(エントリー・エグジット)と、プロが最も重視する「資金管理」の計算方法について詳しく解説します。
1. 具体的トレードシステム(ドンチャン・チャネル)
タートルズが使っていたのは、主に2つのシステムです。どちらも「ブレイクアウト」という手法に基づいています。
ポイント: システム1で見送りルールがあるのは、レンジ相場での「ダマシ」を避けるためです。しかし、大きなトレンドを逃さないよう、システム2ではすべてのシグナルに従います。
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